SQLer 生島勘富 のブログ

RDB・SQLの話題を中心に情報発信をしています。

原発について雑感3

基準値について

 日本は人類始まって二度目の大規模な核の人体実験にさらされている。

 まったく残念な話だがどうしようもない。慌ててパニックになるよりも、どう慌てるべきか、線引きはどの辺にあるのか、冷静に考えよう。

 ツイッターで拾ったたとえ話。

 人は200グラムの塩を一度に食べ、何の治療もしなかったら『ただちに』死にます。
 1日10グラムぐらいの塩を取ることが健康的です。
 1日20グラムの塩を取っても『ただちに』健康に被害はありません
 ただし、毎日20グラムの塩を数十年に亘って取ると、高血圧や狭心症、腎臓病、くも膜下出血など場合によっては死に至る病になります。

 健康にまったく害がない10グラムという基準値(WHOでは5グラム?)は数多くの臨床データによって統計的に出されたものです。それでも慢性的な病気は、本当の原因が何であるか分かりません。

 例えば、もともと病気になりやすい遺伝的特性をもった人がいて、その人がたまたま、遺伝的に濃い味付けのものを好む。という可能性だってあるのです。(遺伝子は既に解明されつつあってその可能性は低いですが)

 同じ食事をしていても、長生きする人と、不幸にも病気になる人もいるわけですから、本当のところはなんともいえない。塩をたくさん取る人には、高血圧や狭心症、腎臓病などの病気になる人が多いということは、統計的に(確率として)いえるに過ぎません。

線形モデル

 塩の場合、誰もが塩の入った食事をし、濃い味付けが好きな人も、薄い味付けが好きな人も存在するため臨床データが取れますが、好き好んで放射線に何十年とさらされ続ける人は多くないので、世界的に『長期間放射線を浴びるとこうなる』という臨床データはほとんどありません。

 年間1mSvとか、20mSvとかいろんな基準を政府は出してくるけれど、これらは、広島・長崎のデータを元に作られた基準です。原爆による被爆からのデータを基にしているわけで、一瞬で浴びた放射線に対する影響と、少ない量を長い時間浴びたときの影響を同じとして見積もって出されたものです。

 一度に100グラムの塩を取った人の20%が後に亡くなった。
 一度に50グラムの塩を取った人の10%が後に亡くなった。
 ことから、
年間に5グラムの塩を取ると1%の人が亡くなる。

 という予測(線形モデル)で基準値をつけています。

 つまり、一度に食べると死ぬ塩の量と、毎日食べてこれまで食べた塩の量が超えてしまうと死んでしまう。というのが線形モデルの考え方ですが、おかしいでしょう。

塩と放射線は違うだろう。

 本当に違いますか?

 毒物で線形モデルに近い特性を示すものがあります。鉛や水銀などの重金属です。

 重金属で害になるものの中には、体内に入ると簡単には抜けないタイプのものがあり、体内で蓄積され、蓄積された量の分だけ人体に害を与える可能性が高い。そのため、極わずかでも長期間に亘って取り続けると害が出ます。
 塩は毎日、一般に食しています。しかし、自然なものでない放射線は少しでも体に良くないかもしれない。だから、重金属と同じ線形モデルが正しいだろう。

 というのが「線形モデル」の考えです。

 もちろん、重金属も完全に線形にはならないけれど、線形で害を予想する方が安全になる。線形モデルを採用すると「わずかでも危ない」ことになり、1mSv浴びると数千人に何人かがガンになる計算が成り立ちます。

 冷静に考えると、自然界で浴びる放射線量が年間2.4mSvなのに、人工的にさらに1.0mSv浴びると害が出るというのはおかしくないか?
 塩に1日10グラムという基準があるように、放射線にも1日で何μSv、1年で何mSvまでは安全という基準となる値、つまり閾値(しきいち)があるんじゃないか?と考えているのが「閾値モデル」です。

 私は当然「閾値モデル」派です。

 一瞬で浴びた放射線の量によって、被害が線形(リニア)に出るというのは正しい。しかし、長期間の被曝に対しては、傷ついた細胞は修復(回復)する機能があることが分かっていて、放射線による傷もわずかな傷であれば修復されることが分かっているため、線形モデルはおかしいと考えられるわけです。

 ただ、線形モデルのおかしさを証明し、閾値がどのぐらいか測るには人体実験が必要です。
 例えば、赤ん坊が30歳になるまでの30年間、1年に10mSv、20mSv…500mSvの放射線にさらし続け、どんな障害が出るか調査する。ってできるわけないでしょう。

 線形モデル派と閾値モデル派が言い争った場合、動物実験や細胞レベルの実験では、線形モデルはおかしい。とは言えます。
 ところが「じゃあ、閾値はどこにあるのか?」と聞かれたとき、閾値モデル派は臨床(人体)実験するわけにはいかないため答えは出せない。そのため「分からないから線形モデルを使おう」となっています。

偶然の人体実験 −− チェルノブイリ事故

 チェルノブイリ事故は偶然の人体実験になってしまいました。

 消火や後の作業で急性に亡くなった方は、慢性の被曝と違いますのでのけて考えると、被害者は極わずかとも言われていますし、数十万人とも言われています。

 塩を1日に20グラム食べ続けた人の死亡率みたいなもので、本当にそれが塩の影響か分かりません。影響は20年とか30年のスパンで見ていますが、その間に医療技術も進歩しています。ガンで亡くなる比率が増えるのは、その他の原因で亡くなる人が少なくなったためということもあり得ます。チェルノブイリ周辺で平均寿命がどのぐらい変化したのか?という調査も必要でしょう。ガンというのは比較的高い確率で発症しますが、早期発見すれば完治することも多いです。チェルノブイリでは他の地区よりも頻繁にガンの検査が行われているため、ガンの発見率が高くなった。ということも考えられるでしょう。農作物が売れなくなったり、仕事を変わったりのストレスのため、ウォッカを自棄のみする人が増え、アルコールのための疾患が増えた。などという噂もあります。

 何にしても、統計学的に有意な増加が見られるのは、今のところ「甲状腺ガン」のみとのことです。

 まだ、事故から25年しか経っていません。
 原爆による放射線の長期間に亘る人体への影響はもう少し長い時間を掛けて行われていますので、チェルノブイリの結果が出るには、さらに時間が掛かるでしょうが、線形モデルと一致するようなデータはなさそうですから、最終的には閾値モデルが正しいとなりそうです。そうなれば、実は放射線は怖くない
 原発事故は、初期の放射性ヨウ素を乳幼児、妊婦(胎児)が避ければ大した問題はない。という結果になるかもしれません。

福島原発の影響で甲状腺ガンになるか?

 二つの資料を見てください。推進派と反対派の資料です。どっちも見にくい!

 原子力システム研究懇話会 村主 進 氏
 http://www.enup2.jp/newpage36.html

2.2 甲状腺被ばく線量
 放射性ヨウ素は特に多く甲状腺に蓄積され、甲状腺ガンや甲状腺結節を発症する。
 甲状腺被ばく線量の評価は事故後直ちに行われた。その方法は放射線測定器を喉の前面に当てて測定するものであった。しかし測定方法のマニュアルはなく測定器の位置(喉からの距離)はバラバラで、測定精度にバラツキがあった。このためその後線量の再評価が行われてた。

 ウクライナ国の県別、年齢別の甲状腺被ばく線量を整理したものを示すと表2のようになる。
 子供の甲状腺は大人より小さく、甲状腺被ばく線量は子供のほうが高くなる。また幼い子供ほど甲状腺線量は高くなる。したがって表に示すように、0.2Gy以上に被ばくした子供は、年齢が低いほど、被ばく者数の割合が高くなっている。また少数であるが、10Gy以上の被ばくをした子供もいる。

表2 ウクライナ国の集団別、年齢別の
甲状腺線量被ばく者数百分率

 京都大学原子炉実験所 今中 哲二 助教
 http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/reports/kr79/kr79pdf/abstract-JF.pdf

<7. p.86-96>
……
甲状腺ヨウ素 131 の直接測定結果に基づく被曝量評価によると、甲状腺被曝量のメディアン値は、カルーガ州(7 地区)については子供で 30mGy、大人で 8mGy であった。ブリャンスク州 5 地区の大人に対するメディアン値は、30mGy から 140mGy であった。
……

 問題は、甲状腺に対する内部被曝量。
 推進派の村主氏はウクライナのデータでGyで、反対派の今中氏はロシアのデータでmGyで表現している、単位は統一しないとややこしいので、mGy(≒ mSv)で話を進める。

 詳しくは分からないが、どちらも直接測った旨の記述がある。

 甲状腺は喉ぼとけの下辺りにあるけれど「1歳児の喉ぼとけってどこよ」って感じですよね。何万人も調べると、その後、再評価が必要なほど測定者によってバラツキが出るのは、まあ想像できます。それは、反対派の今中氏の記述が、平均値ではなくメディアン値(中央値)を使っていることでも分かる。データとして突出して大きな値が出ているのもあったのでしょう。

 推進派の村主氏は小数ではあるが10000mGyは大きすぎるでしょう。4000mGyでほぼ100%亡くなると一般に言われている線量ですから、再評価で恣意的にいじり過ぎたんじゃないかと疑うぐらいの数字です。

 反対派の今中氏の方が小さな数字を使っているというのも興味深いが、どっちが正しいのかまったく分からない。まあ、そんなことはどうでもいい。喉に溜まった放射線量は、測定誤差や、牛乳をたくさん飲んだ子と飲まなかった子で差があるでしょうが、低い方を採用して30mGyであったとして考えると、それはつまり、

 チェルノブイリ事故では、喉ぼとけ(甲状腺)に30mGyぐらい被曝するほどの放射性ヨウ素を溜めた子供がウクライナだけで9万人、トータルで数十万人単位で出た。そのうち4000〜6000人ぐらいが5〜20年後に甲状腺ガンになって、20人ほどが亡くなった。

 ということになる。

 何が言いたかったかというと、30mGyは積算値(累積値)なので、喉に測定器(ガイガーカウンター?)をあてて測定した結果を積分して30mGyという数値を出したはずです。

 じゃあ、元の測定器の値はどれぐらいだった?
 逆算するのは面倒だから概算で、よく使われる時間当たりのμSvに直してみよう。

 放射性ヨウ素半減期は8日なので8日間で30mGyの半分の15mGy被曝すると考えると

    15 ÷ 8 ÷ 24 × 1000 = 78μSv/h

 78μSv/hというのは、福島原発の20km件の警戒地域の中でも相当に高い方の線量で、生物濃縮の恐ろしさを感じます。正確に逆算して求めるともっと高い値になるけど概算で十分でしょう。

 その恐ろしいほど高い数値の放射線を出すほど、放射性ヨウ素を喉に溜めていたとしても、数%が放射線ガンになって、0.0数%ほどが亡くなる計算です。

 もちろん、これほどに高い子供は福島にはいないでしょう。もしいたら上へ下への大騒ぎになっていたはずです。
 
 現状、検出されている放射線量が正しければほぼ大丈夫で、たとえ母乳からわずかに検出されても、どうということはありません。

東電も政府も隠蔽しています

 東電も政府も相当隠蔽しています。私も普段なら激怒するぐらいえげつない対応です。しかし、今は非常時だからいいんじゃないの。今、東電の役員を吊るし上げようと、政府を叩こうと、何も解決しないどころか悪い方向にしか行かない。

 隠していることは原発から20km圏内で起きていることと海への漏出・投棄。

 20km圏外のことは、東電も政府も関係ない人たちがさまざまな測定を行っているから隠しようがないし、一般人が関係するのはそこだから、隠していようがいまいが関係ないのです。


 20km圏外の客観的なデータを見ても健康被害があるようなデータはない。福島で出ている放射線より、ストレスの方が遥かに大きいです。ガンなんて笑って治した人もいるぐらいのものですから、とにかく大丈夫だと考えることの方が大事でしょう。

 あまつさえ、福島の人を差別するなんて、あってはならないことです。