SQLer 生島勘富 のブログ

RDB・SQLの話題を中心に情報発信をしています。

原発について雑感2

マグニチュードと対数グラフ

 マグニチュード地震のエネルギーの対数と線形関係にあり、マグニチュードが2増えるとエネルギーは1000倍になる。 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9E%E3%82%B0%E3%83%8B%E3%83%81%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%83%89

 放射線量や放射性物質の量にをあらわすグラフは対数グラフになっていることも多い。原子というものは非常に小さなもので、原子の中にあるさらに小さな原子核の分裂(崩壊)によって放出されるエネルギーは非常に大きいため、対数や指数演算が理解できないと理解できないことが多すぎる。

 マグニチュードが1増えるとエネルギーは約32倍、2増えると1000倍になるということの意味が直感的に分からない人は、原発に対する多くの数字の意味をほとんど理解できてない可能性が高い。ペタ・テラ・ギガ・メガ・キロ・ミリ・マイクロ・ナノ・ピコも、感覚的に換算できてないだろう。

 そういう人は、青汁やサプリメントのコマーシャルに簡単に引っかかるだろうし、今の報道は怖いだろうなと思うけれど、まず、中学・高校の数学をやり直してから冷静に考えてはどうか。

数字から安全性を考える

 例えば、http://www.nicovideo.jp/watch/sm13870618 ゴキブリや昆虫が放射線にどれだけ耐えられるか実験をした人たちがいるらしい。人間の100倍に耐えられる虫もいるようだけれど、いわゆるサプリなどの数字のマジック?に掛かると、これは数百万〜数千万倍に耐えられる計算になる。

 どういうことかというと、動物実験から毒性を測るとき動物の致死量に体重比を掛けて人間の致死量を出す。ゴキブリより小さい虫の体重は知らないけれど1円玉よりははるかに軽いはず。

 仮に1円玉の1gとしても、60Kgの人間の致死量に換算すると

    100倍 × 60 × 1000 = 600万倍

 こんな数字になんの意味はない。

 他にもダイオキシンなどの毒性もこのやり方で測って超猛毒とされているけれど、人間に対しては大したことはないらしいし、浅黒い司会者がいう健康に良い食材の多くも、ネズミの健康増進にしか大して効かない可能性が高い(効くかも知れないけど、プラシーボ効果もあるからね)。「ホンマでっか!?」ってバラエティもあるけれど、上方(大阪)のルールとして「ホンマでっか!?」っていうのは「ウソでんがな」につながるボケという意味で使われているということです。それを知らずに本気にする人も多いみたいだからな〜。

 放射線は直接的な害と、慢性的な害があるが、直接的な害としての限界値(致死量や健康被害が起きる閾値)はかなり分かっていても慢性的な害は良く分かってない。

 他の動物に比べ人間の方が放射線の影響を受けやすい傾向にあるだろう。なぜかというと、他の動物はもともと寿命が短く慢性的な害が出る前に自然死してしまうから、慢性的な影響については、長期間放射線を浴びた人を大量に調査して統計を取らざるを得ず、よく分からないのが現実で、分からないから大きなバッファを取って基準値がつけられている。

隠蔽体質ができる理由

 中越地震の時に私は東電を褒めまくってた。http://bit.ly/fpvnKh 褒めつつ、ちゃんとしろと書いていたけれど、結局は私が期待するほどはちゃんとしていなかったのは残念の極みです。

 中越地震では、燃料プールがチャップンとなって風呂一杯ぐらいの水(1.2トン)が海に漏れた。最初6万ベクレル(テラとかギガじゃなく)って言ってたのが、後から、計算間違いが分かり9万ベクレルだったと訂正。

 1.2トンの水、9万ベクレルが海に放出されたって、今、聞けば「なんてのどかな数字なんだろう」って思うね。

 そんなのどかな数字でも、訂正の記者会見はそりゃーもう酷いものだった。会見に出てきた技術者は、技術のまったく分からない記者の完全に破綻したロジックで吊るし上げになっていた。

 事故を起こしたくせに不誠実だとか……

 当時の記者会見を見ての感想。

原子力の話を、東電の技術者の記者会見の話を理解するには、専門家である必要はないと思うが、最低限、高校の物理を高いレベルで理解している(つまり大学生レベルの知識)必要があるだろう。
だから、記者会見に参加する記者に、センター試験(私は共通一次の世代)の物理の試験を課してみてはどうか?

少なくとも、記者会見の場に入る記者の8割は、60点取れる人、2割ほど取れない人をオブザーバ的に参加させる。(60点でも低すぎる気もするが)
という体制にならないと、一般市民に正しいことは伝わらないでしょう。

東電の技術者と大学生レベルを比べたら、これまた埋めがたいほどの知識の差はあるのだが、東電は大学生レベルの知識があれば理解できる説明はしていると思う。
記者会見で高校の授業と同じレベルの話からスタートしたら、3日あっても終わらないからね。

現状では、物理の話がたくさん出てくる記者会見の場に、センター試験で20点も取れないであろう(つまり物理の分野では中学生レベルの知識)連中が、数の暴力で技術者を吊るし上げにしている。
見ていて居た堪れない。

例えば、私が外国語で行われる記者会見に通訳なしで行っても何も分からない。
しゃべっていた人の印象などで記事を捏造するしかない。
逆に日本人の記者会見に外国人が来て「なぜ、チョンマゲじゃなの?」って質問が出るようでは噛み合わない。
で、困った顔をしたところを不誠実だと伝えられたら…。

それと同じことになっている訳です。

記者会見に来ている記者は、技術の理解度は中学生レベルですが、揚げ足を取るということにおいてはプロ中のプロです。
説明なんて聞いても分からない上に、プロ中のプロが「揚げ足を取ってやる!」って態度で来るのだから、厄介でしょうがない。

全然分野は違うが、技術者の立場としてちゃんと話しても誤解されるから、「もう話さないでおこう」と隠蔽体質になるのは想像に難しくない。
そうなったのは悪いことですが同情すら覚える。

専門家としての説明責任は、大学生レベルの素人に分かるようにやさしく説明することまでだろう。
知識もないのに、理解できないと食って掛かる記者もいるが、言いがかりも甚だしい。

専門家の説明を聞いて中学生レベルの素人にも分かるように伝えるのが、記者の本分じゃないのか?
それが出来なかったら記者など要らない。

つまり、記者会見にでる記者は、専門化レベルでなくても、大学生レベルの素人になっておく必要があるわけだ。

しかし、新聞や雑誌の記事を読むと「この記者は中学生レベルの物理の知識しか持っていない」ということが伝わってくる。
一般市民はそのいい加減な記事しか情報がないのだから、不安になるのも仕方がないね。

しかし、こんなことで技術立国としての日本はどこに行ってしまうのだろう。

 隠蔽体質になるのは悪いことだけれど、感情的で、理解力がないというか、理解するつもりのない人を相手にするのは技術者はものすごく苦手なんよね。その気持ちは分かる。だから、東電は何億払っても池上さんを雇ったらどうか。(結構テレビで援護はしてくれているようだし……)

東電や政府は隠しているか?

 逆に、あなたは隠し事は一切ないのか?いっぺん携帯見せてみ(笑)

 そら、東電や政府もイロイロ隠しているでしょう。

 究極のところ、隠すことによって100人が亡くなっても1万人が助かるなら、近い将来、職を追われることになっても、発狂するぐらい追い詰められても、隠すべきです。それぐらいつらい職だと思う。

 我々は残念ながら手出しはできない。だから、東電や政府に任せるしかない。彼らの私欲や保身から、隠蔽を行ったり、間違った判断をしているのでなければ、たとえ間違いであっても、それは天災の一つでしょう。あきらめるしかないです。

 もし、彼らが私欲や保身のために判断を誤るようなことがあったのなら、後から批判すればいい。それは、全世界の歴史の教科書に「人類の敵」として刻み付けられるレベルの話になる。

 彼らは、それが一番いやなはずなので、みんなで「あなたたちを信じますよ。でも、もし、私欲や保身のために何かを行ったら、後から全部分かります。歴史に悪しき名を残しますよ」って信任とプレッシャーを与えればよいのではないか。

 批判や揚げ足取りをやっても何も解決はしないと思う。

 とは言いながら、今、首相をやっている人は……。首相どころか、次の衆議院選で落ちるんじゃないかと思うぐらいむかついてはいるけれど(苦笑)。